自然体験教育者の松崎です。
ネットやチラシで参加者を募集する、いわゆる教育キャンプでは、2泊3日や3泊4泊などの日程でスケジュールが組まれていることが多く見られます。
もちろんデイキャンプもありますが、夏休みなどには宿泊型の子ども向けキャンプがあちこちで開催されていますよね。
日帰りと宿泊のどちらが良いとは一概に言えませんが、教育的視点でいえば宿泊キャンプの方ができることが多いのは確かです。
そこで今回は、なぜ、募集型キャンプは3泊4日程度が多いのかについて解説します。
参加者側の人にとってはどうでもいい話かもしれないので、気楽に読んでみてくださいね。
募集型キャンプの期間
親御さんもしくは子どもが自発的に応募する教育キャンプの期間は、主催者によって異なります。
一般的に募集型キャンプの実施期間は、以下の3つに分類されます。
- デイキャンプ(日帰り。3〜10時間程度)
- 短期キャンプ(1〜3泊程度)
- 長期キャンプ(10泊以上)
ここでは長期キャンプの目安を10泊以上と書きましたが、何泊以上なら長期キャンプという厳密なルールはありません。
そのため、1週間ほどの体験プログラムでも長期と思えば、長期キャンプといっていいのです。
【教育的視点】なぜ、募集型キャンプは3泊4日が多いのか?
募集型の宿泊キャンプは、短期と長期の2つに分けられます。
その中でも、2泊3日や3泊4日などのキャンプの募集をよく見るような気がしませんか?
おそらくその理由は、3泊程度のキャンプが最も肉体的・精神的にかかる負担のバランスが丁度良いからだといえます。
以下は、キャンプ公益財団法人 日本キャンプ協会「キャンプ指導者入門」を参考に、キャンプにおける子どもの精神的・肉体的な変化をまとめた表です。
疲れ方には個人差があるので、あくまで目安としてお考えください。
【3泊4日のキャンプにおける子どもの精神的・肉体的な変化】
1日目 | 緊張や不安。眠りが浅なくなりやすい | 体力100% |
2日目 | 少し慣れてくる。食欲が増える。眠りが深くなる | 体力80% |
3日目 | 活動にも人間関係にもほぼ慣れる。素が出てくる | 体力70〜80% |
4日目 | 楽しいが疲労も溜まってくる | 体力60〜70% |
いくら子どもがアウトドア好きとはいえ、キャンプ期間は長ければ長いほど、子どもにかかる負担は大きくなります。
グループには初対面の子もいるでしょうし、初参加であれば慣れない環境に対応しなければいけないので当然ですね。
指導者側としても、キャンプは長期期間になるほど労力が大きくなります。
全日程のプログラム作成や道具の準備、子どものアレルギーや怪我などの把握、当日のマネジメントなどの作業が、ドーンとのし掛かってくるからです。
「じゃあ、全部デイキャンプにすれば?」と思うからもしれませんが、そうもいきません。
なぜなら、教育的効果を考えた場合、デイキャンプでは期間が短すぎるからです。
デイキャンプは子どもの肉体的・精神的な負担も少なく、楽しさが先行しやすいのがメリットですが、子どもの成長を目的とする場合には時間が足りません。
少ない時間だと指導者側はどうしても、キャンプや川遊び、ツリークライミングなど体験自体の進行に重きを置いてしまいます。
そのため、コミュニケーション力や自主性といった深い部分まで子どもをケアしにくく、学びが浅くなりやすいのです。
とはいえ、1週間や10日間のキャンプでは長すぎる……。
そんな教育的な理由と子どもの肉体的・精神的な負担、世間のニーズを考えると、募集型キャンプは2泊や3泊に落ち着くのだといえます。
長期キャンプのメリット
募集型の宿泊キャンプが多く開催されている理由には、親御さんや子どもの要望だけでなく、教育的な意義も含まれています。
キャンプ日程は長いほど良いというものではないと思いますが、「アウトドアを子育てに役立てたい」という方は、長期キャンプのメリットについて知っておくといいでしょう。
あわせて読みたい
>> 自然体験のメリットとは? 子どもの生きる力を育むために親ができる3つのこと
>> 子どもの問題解決力は、“遊び” で伸ばすくらいがちょうど良い
体験の機会が増える
これは分かりやすいですね。
キャンプの日程や期間が長くなれば、その分だけ活動の機会が増えます。
デイキャンプなら野外炊事をして水遊びもすれば、すぐに時間がきて解散となってしまいますが、長期キャンプではそこからさらに一歩先へ進めます。
カレー作りであれば、そのときの成功や失敗を翌日の野外炊事に活かすことができますし、他の子にやり方を教えてあげる機会もあるでしょう。
長期キャンプでは単純に体験の機会が増えるだけでなく、学んだことを忘れないうちに次の活動に活かせます。
生きる力を育成しやすい
OJTなどの会社の新人教育もそうですが、教育には時間がかかります。
その意味でキャンプに教育的効果を期待するのであれば、やはり一定の期間が必要です。
そうはいっても1週間などの長期キャンプは、子どもへの負担も大きいので無理は禁物ですね。
おすすめとしてはまず、デイキャンプのプログラムに定期的に参加させるのがいいかもしれません。
同じスタッフや参加者と何回も顔を合わせていくことで、コミュニケーション能力も育めますし、1ヶ月に1回などの頻度で参加していれば以前にやった活動も覚えているはずです。
子どもの “素” の部分が出やすい
変な話、デイキャンプはごまかしが効きます。
大人でも新入社員の頃や初めてのバイト先では猫を被ったり、自分が出せなかったりすることがありませんか?
でも、何度も職場に行って仕事をしているうちに、仕事にも慣れ、周囲の人とも打ち解けてきて、自分らしく過ごせるようになっていきますよね。
教育キャンプもそれと同じです。
初日こそ子どもも緊張していますが、2泊や3泊もあるとだんだん慣れてきて、自分らしい発言や行動をするようになっていきます。
逆にいえば、そういった “素” の部分が出てこないと、キャンプでの気づきや学びも本人の心に突き刺さりません。
人間ずっと緊張していると疲れますし、2日も3日も絶えず自分を取り繕うことは困難です。
子どもの“素”の部分を引き出して、深い学びを与えるためには、デイキャンプよりも宿泊キャンプの方が有効なのです。
まとめ
募集型キャンプで2泊や3泊の日程が多いのは、高い教育的効果が期待できるからです。
デイキャンプでは十分な時間がなく、長期キャンプでは参加側も「長い」と感じやすいので、3泊程度のキャンプが手頃なのだと思います。
また、宿泊キャンプでは楽しさを味わいながらも、肉体的・精神的に適度にストレスがかかることで、子どもの “素” の部分が引き出せます。
それによって子どもがハッとしたり、活動に積極的になったりする機会が増えて、より学びが深くなるといえます。
キャンプの日程は長いほど良いとは思いませんが、興味のある方は子どものやる気や体力も考慮した上で、宿泊キャンプに参加させてみるのものいいのかなと思いますよ。