【登山初心者向け】“震え”は体からのサイン。低体温症の症状と予防策

【登山初心者向け】“震え”は体からのサイン。低体温症の症状と予防策

登山で起きる危険な症状の一つに、低体温症があります。

何となく聞いたことがある人もいるかもしれませんが、詳しくは知らないのではないでしょうか?

寒さが原因となる低体温症は、条件さえ揃ってしまえば大人から子どもまで発症します。

標高や季節も関係なく、夏山でも起きる可能性があるのが怖いところです。

そこで今回は、登山における低体温症の症状と予防策についてご紹介します。

低体温症は深刻化すると命を落とす危険もあるので、しっかりと知識を身に付けておきましょう。

低体温症とは

無積雪期の登山

低体温症とは、体温が35度以下になった状態をいいます。

体が汗や雨で濡れた状態で寒さにさらされたり、激しい行動や疲労からエネルギー不足になったりすると、低体温症になる可能性は高まります。

登山での低体温症の事故としては、2009年7月のトムラウシ山遭難や2012年5月に起きた白馬岳の遭難が有名です。

どちらもパーティーのほとんどが死亡しており、アウトドアにおける安全管理の重要性を再確認するニュースとなりました。

これらの事故からも分かるとおり、低体温症は夏山でも起こります。

「高山じゃないから」「手軽な日帰り登山だから」といった場合でも、急な悪天候に見舞われることはあるので油断はできません。

最初は「寒い」と感じるだけだった症状が見る見る重症化し、命を落とす可能性もある点が、低体温症の怖いところです。

「震え」は体からのサイン!低体温症の症状

体温計

寒さで「震える」「歯がガタガタ鳴る」などは、低体温症の初期症状です。

一度体温が下がり始めて低体温症になると、症状は急激に進行していきます。

以下では、低体温症の症状と体温目安をまとめました。

【低体温症の症状と体温】

  :正常、  :軽い症状、  :重症

体温症状
36.5度正常温
36度体全体に寒さを感じ始める
35度震える、手足の動きが鈍くなる、判断力の低下
34度歩行がおぼつかない、転びやすくなる、会話が難しくなる、意識の低下
33度歩けない、刺激に反応しない
30度錯乱状態
28度心室細動

  の比較的軽い症状であれば、体を温めて休ませるなど山でも対応できます。

しかし、  の状態に陥った場合、山での救命は困難です。

「寒さで震えが始まった」ということは、体が体温を取り戻そうとしているサインであり、低体温症の始まりなのです。

低体温症になったときの対策

雪にヘルプ文字

低体温症は一度始まると、体温低下のスピードは早くなっていきます。

そのため「低体温症かも」と思ったときは、以下のような対策を取りましょう。

  • 風を避けられる場所に避難
  • 体を温める
  • 重症時のマッサージは避ける
  • 撤退する
  • 搬送・救助を要請する

風を避けられる場所に避難

低体温症時は、風を避けられる場所に避難しましょう。

雨や汗で体が濡れた状態で、風に吹かれると急激に体温が低下します。

見晴らしのいい平地などにいる場合は、樹木や岩など少しでも風を避けられる場所で体を休めます。

体を温める

低体温症になったときは、体温を回復させないといけません。

予備の衣類を重ね着したり、カイロで首や脇の下、股間の付け根を温めたりしましょう。

お湯など暖かい飲み物で、体内から体を温めるのも効果的です(カフェインはNG)。

エネルギー不足や空腹で低体温症になるときもあるので、元気があれば何か食べるのもいいでしょう。

重症時のマッサージは避ける

低体温症では、体を温めて体温を回復させないといけないため、全身マッサージを考える方もいるでしょう。

しかし「行動できない」「意識が朦朧としている」などの重症時は、マッサージを避けるようにします。

体温が低すぎる場合にマッサージをすると、冷たい血液が全身に回ってしまい、かえって症状を悪化させる可能性があるからです。

マッサージは、あくまで軽い症状のときだけにしましょう。

撤退する

軽い症状でも低体温症になった際は、撤退も考えます。

下山中であれば、あとは下るしかありませんが、登りでまだ行程が残っているときには、命に関わる可能性もあるからです。

今は歩行に問題なかったとしても、そのまま登山を続ければ行動不能になる恐れもあります。

一度下がった体温を取り戻すには時間がかかるので、比較的症状が軽いうちに撤退の判断をすることが重要です。

低体温症になりやすい3つの条件

川辺

低体温症にになりやすいのは、濡れ・風・低気温の3つの条件が揃ったときです。

  • 濡れ:雨や雪、汗など
  • 風:歩きにくいと感じる風速
  • 気温:10度以下

雨がそれほど強くないときでも、稜線上など強風にさらされる環境では低体温症のリスクは高まります。

気温が10度以上あっても、濡れた状態で風に吹かれると、体感温度はグッと下がります。

また、子どもは体表面積が体重に対して広いため、大人よりも熱の放出量が多く、体が冷えやすいのが特徴です。

低体温症はどんな山でも起こり得るので、ロープウェイなどで登山するときも予防しておく必要があります。

山での危険を回避!低体温症の予防策

青空の下で登山

低体温症の予防策として重要なのは、濡れを防ぐことです。

雨や雪、汗など衣服が濡れた状態をつくらないようにして、なるべく寒さを軽減させます。

それを前提に、以下では予防策をご紹介します。

(1) 登山用ウェアを着用する

機能性の観点から、登山ではアウトドアウェアを着用しましょう。

特に防水・透湿性・防風を備えるレインウェアは、登山で体温を維持するために重要なアイテムです。

肌着に吸汗速乾性のあるシャツを着て、保温着、防風着と重ね着して服装も山の基本です。

「寒いな」と感じたときはこまめに足を止めて、レイヤリングで温度調節をしましょう。

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(2) 天気予報で天候の変化を予測・確認

登山に出かける前や山小屋の出発前には、必ず天気を確認します。

今晴れている場合でも数時間後には雨が降り、強風になるケースも珍しくありません。

ただ、悪天候でも「せっかく山に来たんだから」と思いから、山頂を目指したくなることもありますよね?

その気持ち、よくわかります。

時間もお金もかけて遠方から来て、山頂がすぐそこにあれば、「もうちょっと」と行きたくなるでしょう。

でも、撤退する勇気を持つことも登山では必要です。

数時間後の天候変化も確認・予測して、ぜひ安全に登山を楽しんでほしいと思います。

(3) レインウェアの着方を見直す

レインウェアを正しく着用するだけでも、低体温症のリスクは軽減できます。

レインウェアは、ザックのウエストベルトの影響から歩いていると段々ズレてくるので、都度直すようにしましょう。

袖口やフードもドローコードでサイズ調節をして、雨が入る隙間をつくらないようにします。

内側に着た衣服の丈がレインウェアよりも長い場合は、そこから衣服が濡れてしまうので、衣類はズボン内にしまうことをおすすめします。

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(4) 長い休憩をしない

稜線上や周囲に木々や岩がない開けた場所などでの長い休憩は、避けるようにしましょう。

これらは風の影響を受けやすい場所です。

特に雨や汗で体が濡れた状態のときは、水分補給やエネルギー補給など最低限の休憩を心がけます。

見晴らしのいい山頂も風を体に受けるので、あまり長いはしたくないところですね。

(5) ツェルトやエマージェンシーシートを用意

万が一、低体温症になったり、強風や大雨の影響で停滞を余儀なくされたときのために、ツェルトやエマージェンシーシートも持ち物に加えておきましょう。

山では「仲間が寒さで動けない」「スケジュールの遅延」など、自分に落ち度がなくても停滞する可能性があります。

そんなときに、ツェルトやエマージェンシーシートがあると、とても心強く感じるでしょう。

これらで体を覆うだけでも、寒さはかなり軽減されるはずです。

日帰り登山でも、お守り・緊急用として用意しておくといいでしょう。

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まとめ

ロープウェイ

低体温症は、登山で危険な症状の一つです。

衣服の濡れや強風に吹かれるなど、真夏でも条件さえ揃えば、低体温症になる可能性があります。

最初は「寒くて震える」程度ですが、症状が進行すると体が思うように動かなくなり、判断力も低下していきます。

体温が34度以下になると山での回復は困難となるので、そうなる前に対処しないといけません。

登山では衣服の濡れを避けて、濡れた状態で風に長時間吹かれないよう、休憩場所やレインウェアの着方には注意しましょう。

山での危険を回避するために、天気を確認・予測することも大切です。

日帰りやロープウェイを使った手軽な登山でもしっかりと防寒対策をして、安全で楽しい山歩きをしてくださいね。