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妙高の冬

新潟移住者が解説「日本海側に雪が多い理由」3つの要素

妙高の冬

冬になると日本海側には多くの雪が降ります。

私は新潟県妙高市に移住して約6年住んでいましたが、そこは世界的にもトップクラスの豪雪地帯でした。

妙高では「今年は暖冬」といわれる年でも、積雪20〜30cmは普通に降ります。

以前、埼玉に住んでいた頃のことを思い出すと「これで暖冬?」と思うレベルです。

今も新潟県では暮らしていますが、やや北部に引っ越したため、妙高と比べると積雪も減って、雪かきもラクになりました。

今回はそんな私の経験も交えながら「日本海側に雪が多く降る理由」について、新潟を中心にご紹介します。

日本海側に雪が多い理由

日本海

そもそも「なぜ、雪が降るのか」について知っていますか?

雪は大気中の水蒸気が冷やされて、氷の状態になった物質です。

それがそのまま上空から地上に落ちてきたときに、雪は降ります。

当然、地上付近の空気が暖かければ雪は溶けてしまうので、雨になったり、みぞれになったりします。

日本海側を大雪にする、3つの要素

日本海側に雪が多く降る理由には、以下の3つの要素が関係しています。

  1. シベリア・中国大陸からの季節風
  2. 日本海を流れる暖流(対馬海流)
  3. 山があること

日本は冬になるとシベリアや中国大陸から“季節風”と呼ばれる、冷たく、乾いた北西の風が吹きます。

季節風は日本に到着する前に日本海を通過しますが、そこには水蒸気をモクモクと発生させている暖かい海流(対馬海流)が流れています。

イメージとしては、お風呂から湯気が立ち上っているような感じです。

季節風はその暖かい空気(水蒸気)をたっぷり吸って日本にやってくるのですが、そこで水蒸気は冷やされ、雲へと変わります。

この段階でも、すでに雪が降る条件は満たされています。

しかし、北陸などの日本海側にはさらに背後に山があります。

以下の新潟を中心とした地形図をご覧ください。

新潟の地形図
出典:国土地理院(地理院地図を加工して作成)

茶色場所は全て山で、緑の部分は平地です。

新潟県が、いかに山に囲まれているかがわかるでしょう。

山の斜面では上昇気流が発生しているため、さらに雲は発達し、妙高のような山沿いに大雪を降らせるという仕組みです。

【冬の日本海側のイメージ図】

冬の日本海側のイメージ
出典:国土地理院(地理院地図を加工して作成)

つまり、たっぷりと水分を吸った季節風が、越後山脈や奥羽山脈などの山々にぶつかるため、日本海側にはドカッと雪が降るということです。

季節風は山に雪を降らせた後、太平洋側に向かいますが、その頃にはもうほとんど水分が残っていません。

そのため、東京などの関東では乾いた風が吹き、冬も晴れやすくなります。

なぜ、妙高(新潟県)は雪が多いの?

妙高の冬

もうお分かりかもしれませんが、妙高に雪が多い理由は、上記の3つの要素をすべて満たしているからです。

前述した通り、日本海側ではシベリア方面から季節風が吹き、暖流の影響で多くの水蒸気が運ばれてきて冷やされ、雲ができます。

妙高には妙高山や火打山など標高2000m以上の山があるので、そこでさらに雲は発達して、大雪になるということです。

以下の地形図を見てください。

妙高が、大雪となる山麓に位置していることがよく分かります。

妙高周辺の地形図
出典:国土地理院(地理院地図を加工して作成)

また、同じ妙高市内でも茶色になっている山沿いの地域と緑色の平野部とでは、雪の振り方が全然違います。

ほんの数キロ移動するだけで、雪が降っていなかったり、逆に大雪だったりすることも珍しくありません。

参考までに、妙高市内でも豪雪地帯である赤倉周辺の地形図も載せておきます。

赤倉周辺の地形図
出典:国土地理院(地理院地図を加工して作成)

妙高山周辺に位置する赤倉や杉野沢などの地区は、「暖冬」と言われる年でも、ここら一帯だけスキーができるくらいの積雪量があることもあります。

豪雪地帯と呼ばれる妙高の暖冬は、都会の暖冬とは一味も二味も違います。

新潟の雪は重く、一つ一つのかたまりが大きい

妙高の雪と車

北海道出身の私が初めて新潟の雪を見た時の感想は、「降ってくる一つ一つのかたまりが大きく、雪が重い」でした。

これは地域にもよると思うのですが、新潟と北海道とでは雪の性質がちょっと違うように感じます。

新潟の雪は水蒸気の量が多いので、上空で雪と雪が合体して降ってきます。

一つ一つのかたまりも大きくて、雪かきをするとズシっとくる重い雪です。

一方、北海道の雪はいわゆる「パウダースノー」であり、水蒸気の量が少なく、乾いた雪が多いという印象です。

雪の状態はその年や地域にもよるので一概には断定できませんが、個人的にはこんな風に思いましたね。

北陸のような豪雪地帯は、世界的にも稀なエリア

上越国際スキー場

雪が降る地域で暮らしている人からすると、雪は「ないと寂しいけれど、あればあったで邪魔くさい」という感じです。

もちろん「景色がきれいだな」と思うこともありますが、観光客と違って生活があるのでそれだけでは済みません。

しかし、北陸地方のように「水蒸気が多く」「気温が低い」という条件が重なる地域は、世界的に見てもほとんどないようです。

通常、水蒸気は暖かい空気に多く含まれるので、気温が低ければ水蒸気量は少なくなります。

夏に外に出ると湿気でムワッとすることがありますが、冬はしないのと同じです。

日本海側の地域のように「水蒸気が多く」「気温が低い」という矛盾した条件が両立する場所は、世界的にも希少なエリアです。

豪雪地帯など雪の多い地域に住んでいる人は、もっと自分の地域に誇りを持っていいでしょうね。

【まとめ(日本海側に大雪を降らせる3つの要素)】

  1. シベリア・中国大陸からの季節風
  2. 日本海を流れる暖流(対馬海流)
  3. 山があること