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ゴッドアイ作り

【簡単にわかる】自然体験が与える、子どもへの教育効果

ゴッドアイ作り

自然体験には、キャンプや登山、川遊び、虫採りなどさまざまな活動があります。

子どもの教育に関心のある方であれば、「自然体験にどんな教育効果があるの?」と思っている人もいるのではないでしょうか?

自然体験は「ただの遊び」と思われがちですが、気持ちがリラックスしやすい「遊び」だからこそ脳が柔軟になり、学びが定着しやすい活動ともいえます。

身近できる自然遊びもたくさんあるので、「自然体験があまりない」という親御さんでも心配いりません。

そこで今回は、自然体験が子どもに与える教育効果についてご紹介します。

私は市役所職員の頃、自然体験活動の企画・運営を含む青少年教育を、4年間担当していました。

アウトドア専門学校では野外教育を学び、現在は自然体験指導者/Webライターとして活動しています。

私の経験も交えてわかりやすく解説するので、ぜひ気軽に読んでみてくださいね。

自然体験が与える、子どもへの主な教育効果

ゴッドアイ作り(自然体験)

文部科学省でも言われているとおり、体験活動は、子どもの “生きる力” を育むためには必要不可欠な存在です。

自然体験活動は、一見「ただの遊び」と思われがちですが、学校ではなかなか育ちにくい能力の発見や開花にも役立ちます。

以下は、自然体験で主に育つとされている子どもの能力です。

【自然体験も主な教育効果】

  • 自然への親しみ・理解
  • 創造力
  • 想像力(イマジネーション)
  • 探究心
  • 自主性
  • コミュニケーション能力(思いやり、気遣い)
  • 問題解決能力

少し抽象的で、わかりにくいですね……。

もう少し例を挙げながら、詳しく説明してみましょう。

まず自然の中にいると、不思議な現象や予想外の出来事に多く出会います。

名前の知らない花を見つけたり、とんでもない形の木があったり、急な雨に振られて寒い思いをしたりといった具合です。

こういった事態に直面すると、子どもは

  • この花の名前は何?
  • なんで、こんな形になっているの?
  • どうにか暖かくできないかな?

など、頭の中でさまざまな考えを巡らせます。

もし家族キャンプであれば、少し困ったことがあれば、お父さんやお母さんがすぐに助けてくれるかもしれません。

でも、応募型のキャンプの場合、ときには自分で行動しないと、何も解決できないこともあるでしょう。

そんな日常生活とはかけ離れたことが起こりやすい自然体験活動だからこそ、「創造性」「イマジネーション」「探究心」「問題解決能力」など、自分で考えて行動する力が育まれやすいのです。

応募型のキャンプであれば、他の学校の子と一緒に数日間を過ごすので、他者との関わり方を学ぶ「コミュニケーション能力」や、自分から友達をつくりにいく「自主性」も育ちやすくなります。

このように自然体験には、学校の勉強だけでは育ちにくい教育効果が数多くあります。

【経験談】自然体験の具体的な教育効果と子どもの変化

ゴッドアイ作りの様子

すでに自然体験をしている方の中には、「ウチの子、何も変わってないんですけど……」と思う親御さんもいるかもしれませんね。

でも、本当にそうでしょうか?

私の経験からいって、子どもの中には応募型のキャンプなどの自然体験に参加したときだけ見せる顔を持っている子もいます。

実は隠れリーダーだったり、人の話をちゃんと聞けたりといった感じです。

ここでは、私がこれまで応募型キャンプのスタッフとして関わった経験から、具体的な子どもの成長事例についてご紹介します。

家族キャンプとはちょっと違うかもしれませんが、「こんな教育効果があるんだなぁ」と一つの参考にしてみてください。

自分の意見が言えるようになる

市役所が主催する、2泊3日の自然体験活動を企画・運営していた頃、参加者である小学校高学年(女の子)の親御さんから、イベント終了後に手紙をもらったことがあります。

手紙には、「家に帰ってきてから、子どもがずっとキャンプの話をしています。人前でも意見を言うようになってきました」といった内容だったと記憶しています。

確かに私から見ても、その子はおとなしい感じの子で、「元気で活発」というイメージではありませんでした。

でも、他の学校の子と交流したり、一緒に寝泊まりしたのをきっかけに、少しずつ本人の中で何かが変わっていったようです。

普段の生活では気が付かない、得意なことが見つかる

自然体験を通じて自分の得意なこと、できることに子どもが気が付くこともあります。

学校の勉強は苦手だけど、火起こしは得意だとか、自然の中で珍しいものを見つけることができるとか、そういうことです。

実際そういう子は、結構います。

以前、小中学生を対象に、仲間づくりを目的とした野外活動ゲームを指導していたときのことです。

近くで学校の先生が見ていたのですが、「あの子、学校とは雰囲気違いますね」と言われたことがあります。

意外な子がまとめ役だったり、アイデアマンだったりなどですね。

「自分はこれが得意かも」と思えることが発見できれば、自己肯定感も高まります。

親との会話が増える

楽しかった思い出を、親と共有したいという子は多くいます。

何日も前にキャンプは終わったのに「子どもがいつもキャンプの話ばかりしている」という声はよく聞きますね。

家族キャンプでも何でもいいと思いますが、子どもと共通の趣味があれば日常での会話も増えそうです。

他の学校に友達ができる

自分の学校以外にも友達がいるというのは、とても嬉しいことではないでしょうか?

子どもの場合どうしても、生活の中心が「学校」になりがちです。

自分が通う学校以外にも友達がいて、他にも居場所がつくれると思えれば、それは心のゆとりや精神的な安定につながると思います。

他の学校の子とも交流できるのは、応募型キャンプのメリットですね。

難しくないよ。身近でできる自然遊び

葉っぱのランチョンマット

親御さんの中には、「あまり自然体験の経験がない……」という方もいますよね?

今は直接体験が減ってきている時代なので、都心に住んでいる方を中心に、そういった親御さんも増えています。

自然体験というと、キャンプや登山などハードな活動をイメージしがちですが、そればかりが自然体験ではありません。

たとえば、身近でできる自然遊びとしては、以下のようなものがあります。

  • 散歩
  • 星空観察
  • 葉っぱのカタチ探し(ハート型、丸型など)
  • どんぐり集め
  • 泥んこ遊び
  • 虫採り

自然体験は決して特別な活動ではないので、難しく考える必要はありません。

身近なところでできて、道具もいらずに楽しめる活動はたくさんあります。

何なら少し近所を散歩したり、公園に行ったりするだけでも良いと思います。

自然遊びについては、大人より子どもの方が得意なので、黙って見守っているだけでも勝手に遊びをつくってしまうのではないでしょうか?

よくわからないけれど子どもを自然の中に連れ出してみたり、興味のあることから始めたり、自然体験はそこから始まります。

子どもと自然体験をするときに、大人が意識したい3つのポイント

野外活動

キャンプや登山などの自然体験は、それだけで子どもを惹きつけるパワーを持っていますが、教育効果を考えるのであれば、大人に意識してもらいたいポイントがあります。

具体的には、以下の3つです。

(1) 子どもに多様な経験を与える

幼児期など子どものうちは、大人が体験の幅を増やしてあげるのがおすすめです。

子どもは大人よりも、ずっと狭い世界で生きています。

今はYouTubeなどで子どもでも情報を集めやすくなりましたが、それでもまだ大人と比べると情報集めについては劣るでしょう。

それに子どもは車を運転することもできないので、どうしても行動範囲に制限があります。

だからこそ大人が、子どもにさまざまな体験の機会を与えることが重要だと思います。

極論をいえば別に自然体験でなくても、自宅で料理を作ってみたり、新しくできたショッピングセンターに行ってみたりといったことでも構いません。

年齢でいえば小学生くらいまでは、できるだけ多くの体験をさせてみせるといいかもしれないですね。

“体験”の幅広さは、人生の選択肢の豊富さに影響するので、子どもの進路や就職先など、将来にも大きく関わってくると思います。

(2) 気づきを与える

子どもと自然体験をするときは、気づきを与えることを意識するといいでしょう。

たとえば、家族キャンプに行ったときに、「川の音が聞こえるね」といえば、子どもは川の音を聞こうとします。

「あそこにいる鳥の色がキレイ」といえば、きっとその鳥に目を向けるでしょう。

森で「変な形のキノコあった」と言えば、キノコをまじまじと観察するはずです。

カンがいい方であれば気づいたかもしれませんが、子どもに気づきを与えるためには前提として、大人がその「対象」に気づいている必要があります。

この例で言えば、川の音、鳥の存在、キノコですね。

そのため、自然体験の教育効果を高めるには、大人も感性を磨かないといけません。

とはいえ、気づくことさえできれば、あとは子どもに「あそこに〇〇あるよ」と言ってあげるだけです。

あわせて読みたい >> 書籍『センス・オブ・ワンダー』には自然を楽しむヒントが詰まっている

(3) 安易に答えを教えず、一緒に考えてみる

自然体験では子どもに気づきを与えるのと同じくらい、子どもに考えさせることも大切です。

たとえば「あそこにいる鳥、ずっと飛んでいるね」と言ったとき、子どもが興味を示せば「あの鳥は何?」「何でずっと飛んでいるの?」などと聞いてくるでしょう。

でも、そこで答えを教えてあげるだけが、教育ではありません。

時には子どもと一緒に考える、もしくは子どもに考えてもらう時間をつくってみるのです。

私も経験がありますが、子どもの中には大人に質問すれば、必ず答えが返ってくると思っている子もいます。

大人だからといって何でも知っているわけではありませんし、私も自然の全てを知っているわけではなく、まだまだ知らないことが山ほどあります。

だからこそ、子どもに質問されたときは、子どもと一緒に考える、もしくは本人に考えさせることで、親子一緒に成長していけるはずです。

子どもの自然体験には、親にもメリットがある

カブトムシハウス(長岡)

子どもの自然体験は、実は親にもメリットがあります。

たとえば、以下のようなことですね。

休みができる

これは、夏休みなどに開催されている応募型のキャンプの場合です。

応募型キャンプに子どもを参加させると、親御さんは毎日の食事作りからも解放されて、お出かけしたり、のんびり休んだりと自由な時間が生まれますね。

その間、子どもは自然体験を楽しんでいるので良いことだらけです。

子どもが健康に育つ

幼少期から自然体験している子は、体の丈夫な子どもに育ちやすくなります。

体の成長パターンを示した発達データ「スキャモンの発育曲線」でも、幼児期は脳の成長や体の発達に重要とされている時期です。

小学生頃には、運動による刺激を与えることで免疫機能が高まり、体を守る働きを強くできるとされます。

つまりは「小さい頃から体を動かした方が、健康に育ちますよ」ということです。

日々の生活に、感謝の気持ちが芽生える

自然体験ではたいてい不便な思いをしたり、不快な思いをしたりします。

「寒い・暑い」
「電気が使えない」
「食事づくりが面倒」

自然の中でこういった「ちょっとしんどいな」という思いを経験すると、家に帰ってきたときに、日常生活の快適さに気づきやすくなります。

「ゲームができる」「お菓子がすぐ食べれる」「家サイコー」などですね。

面と向かって感謝の気持ちを言われなくても、本人の中で何かしらの「ありがたいな」という気持ちが生まれるでしょう。

自然体験によって体験の幅が増えると、人生の視野が広くなり、日々の生活に感謝しやすくなります。

あわせて読みたい記事 >> 今の生活に感謝できる子どもに。自然体験で育つ「ありがとう」の気持ち

まとめ

自然体験には、自主性や創造性、コミュニケーション能力の向上など、さまざまな教育効果があります。

日常生活とは違って何が起こるか分からず、非日常の体験ができるからこそ、子どもも育ちやすいといえますね。

テントの設営や火起こしなど知識を教えることも良いのですが、子どもに「考えさせる」ことも大切にしたいところです。

自然体験は決して特別なものでも、難しいものではなく、近所を散歩するだけでも子どもは何か楽しみ方を見つけてきます。

子どもの独特な感性や視点には、大人の方が学ばされますね。

キャンプでも登山でも何でも、自然体験は1度や2度やったからといって、急に子どもが成長することはありません。

あくまで自然体験は子どもが成長するきっかけにすぎず、そこからどう変わるかは本人や環境次第です。

「自然体験」という遊びを通じて、大人も子どもも一緒に成長していけるといいですね。

【自然体験の主な教育効果】

  • 自然への親しみ・理解
  • 創造力
  • 想像力(イマジネーション)
  • 探究心
  • 自主性
  • コミュニケーション能力(思いやり、気遣い)
  • 問題解決能力