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冬山はヤバイ!?登山初心者が知っておきたい夏山と冬山の違い

  • 2018年10月14日
  • 2021年12月21日
  • 登山

登山を始めたばかりの頃は分からないことがたくさんあるもの。

その中のギモンの一つに、夏山と冬山の違いがあります。

「夏山には何回か登ったし、初心者向けの山なら楽勝でしょ!」

そう考える人も少なくありませんが、同じ山でも冬と夏では全然違います。

気温はもちろん、山の景色や環境、必要な持ち物など、全てにおいて別物と考えたほうがいいくらいです。

私はアウトドア専門学校時代に、3泊4日テント泊で冬山に行きましたが、夏山とは全然違うと印象を強く受けました。

そこで今回は、冬山と夏山の違いについてご紹介するので、登山初心者の方はぜひチェックしてみてくださいね。

登山のハイシーズンは、夏山!

夏山

初めて登山するときは、たいていの人が夏山からスタートすることでしょう。

夏山は、標高が低かったり、道が整備されていたりすれば、歩きやすく、比較的時間もかからないため誰もがチャレンジしやすいです。

1〜2時間歩いて山頂に着くような山であれば、一度、登山慣れしている友達などに連れて行ってもらえば、次からは自分一人で登ることもできるかもしれません。

冬山は危険?

稜線に差し込む太陽の光

夏山は、簡単な山であれば、すぐに道も覚えることができるので、初心者でも登りやすいもの。ですが、これが冬山となると難易度が一気に上がります。

たとえ一度行ったことのある初級クラスの山であっても、景色が一変し、「ここ本当に、あの〇〇山?」と思うほど姿・形が変わるのです。

そのため冬山は初心者はもちろん、何回も夏山を経験している中・上級者であったとしても、決して「楽勝、楽勝」なんて言うことはできないと環境といえます。

なぜ、冬山に登るの?

雪山登山

素朴なギモンとして、「じゃあなんで冬山に登るの?」と思う方も多いでしょう。

その理由の一つは、「冬にしか味わえない山の魅力があるから」、だといえます。

極寒の中を耐えて山に登ることで、美しい雪景色を眺めるとか、更なる達成感を味わいたい。

誰もいない空間だからこそ至福の時間を過ごせるといったことがあります。

冬山の景色

私の冬山経験は、専門学校時代の授業で1グループ8名程度のパーティを組んで行ったものですが、自然の厳しさを感じつつも「あぁ、今生きているな」という命の確かさを強く感じたことを覚えています。

個人的に山好きはストイックな人が多い印象なので、冬山に登るのは「自分へのチャレンジ」という面も大きいのかもしれません。

冬山は夏山よりもリスクが大きいため、より生きていることを実感しやすく、非日常を強く体験できる場といえるでしょう。

冬山と夏山の違い

冬山の光景

「冬山は、夏山とは違う!」という印象は持ってもらえたかと思いますが、ここでは、もっと具体的に「冬山と夏山では何が違うのか?」についてご紹介していきます。※ イメージとしては、2000m級の雪山と考えてください。

とにかく寒い!寒い!!

冬山はとにかく寒いです。夏山と同じ感覚で行くと、場所によっては命の危険を感じます。

とはいえ、初心者には冬山がどのくらい寒いのかはイメージしにくいもの。

ここでは参考までにいくつか山の「最低気温」と「最高気温」をピックアップしました。

一体、どのくらい冬山が寒いのかをチェックしてみてください。

【山名】【標高】【最低気温(2月)】【最高気温(2月)】※【最低気温(8月)】
火打山(新潟県)2,462 mマイナス 19.5℃マイナス 11.3℃9.3℃
霧ヶ峰(長野県)1,925 mマイナス 14.1℃マイナス 3.8℃12.6℃
金峰山(山梨県・長野県)2,599mマイナス 18.8℃マイナス 6.8℃8.7℃
赤城山(群馬県)1,828 mマイナス 13.7℃マイナス 2.9℃11.9℃
伊吹山(滋賀県・岐阜県)1377.31 mマイナス 9.7℃マイナス 1.3℃15.3℃
高尾山(東京都)599 mマイナス 5.2℃7.2℃18.3℃

参考:ヤマレコ

冬山で最も寒いのは2月とされ、ご覧のとおり、気温はすべてマイナスです。

東京の高尾山ですら、冬は氷点下となり、日によっては雪が積もることもあります。

一般的に標高が低くて、初心者向けとされる山でも、冬はグッと冷え込みが増すということですね。

また、冬山では冷たい風が吹くため、吹雪となることも珍しくありません。

稜線で強い風が吹くと凍えるような寒さとなり、実際の気温よりもさらに寒く感じます。

登山道が見えない

冬山は夏山と違って雪が積もっているため、基本的に登山道が見えません。

夏は整備された道がハッキリ見えていたとしても、冬なるとあたり一面はただの雪です。

景色が夏とは全く違うので、初心者であればどこを歩いたらいいか分からなくなることもあります。

そのため冬山は、登山道があってないようなものなので、自分でルートを確保して安全に登って行く技術が求められるわけです。

標識・看板も雪に埋まっている

雪が積もって登山道が見えないということは、当然、看板や標識も埋まっています。

夏山では「ここが、〇〇分岐」「△△m地点」など、標識や看板を目印に登山できますが、冬山ではそれができません。

木に巻いてある赤テープやペンキなども見えないと思った方がいいです。

これは私が専門学校に入学したばかりの頃のことですが、夏山でのフィールドワーク中、登山経験豊富な友人からこんなことを聞かれました。

「山頂に着いたとき、何をもって山頂と答える?」

当時の私は登山経験も少なく、ノウハウもなかったので、「…看板や標識?」と答えたところ、「でも、冬になると看板は雪の下に埋まっちゃうよ?」と友人は答えました。

そのときは友人の回答が屁理屈みたいに聞こえて、とてもやきもきしましたが、今となってはその意味がよく分かりますね。

ちなみに答えは、「周囲の地形や環境を見て、ここが山頂と判断」でした。

地図読みの技術は必須

冬山は明確な登山道がなく、標識や看板も頼りになりません。そのため、地図読み(ルートファインディング)の技術は必須といえます。

現在は、登山アプリでも便利なものがありますが、電池切れなどを考えると、地図とコンパスを使ったアナログの手法も身につけておくべきです。

初心者にとって地図読みは難しいものですが、「今、自分がどの地点にいるのか」「これから向かうべき方角・行き先」を地図から把握できなければ、冬山登山はリタイアした方が賢明です。

夏山よりも歩行時間が長くなる

夏はサクサク登れた山でも、冬山は夏山よりも歩行時間が格段に長くなるもの。

冬になると、予想よりもはるかに歩行時間がかかります。

歩く時間が長くなる理由は当然、雪が積もって歩きにくいからですが、それに加えて、冬はウェア類が夏よりも多くなり、体が重くなることも忘れてはいけません。

遭難・滑落の危険性大

冬山は、登山道が不明瞭なため、遭難や滑落のリスクが高くなります。

道を間違えたり、現在地を見失ったりすると危険な状況に追い込まれることもあるので、地図読みやルートファインディングの技術は大切です。

また、冬山では雪庇(せっぴ)に要注意。

雪庇とは、稜線など風が強く吹く場所で、風下にできる雪のカタマリです。

一見、道のように見えるのですが、ただ雪が固まっているだけなので、誤って踏み抜くと崖下に落ちる危険があります。

夜中に寒くて目が覚める

日帰りや小屋宿泊の方であれば関係ないかもしれませんが、テント泊や雪洞泊をする場合は、夜中に寒くて目が覚めることも。

私がそうだったのですが、寝るときは暖かくても、夜中や明け方になると寒いと感じることがあるものです。

冬山に数人で行ってテント泊するときは、なるべくテント内の隙間を開けずにシュラフを並べて寝ると、比較的暖かく過ごせます。

冬山登山をするときの6つのポイント

青空に眩しい旭岳

冬山は、夏山とは景色や環境が全然違うので、まさに別世界。

登山初心者の中には、冬山に興味がある方もいるでしょうから、ここでは冬山登山をするときのポイントについてご紹介します。

(1)汗をかかない

冬山に登るときは、汗をかかない歩き方が大切。

衣服が濡れた状態で風にさらされると、急激に体温を奪われてしまいます。

冬山ではとにかく「濡れ」が天敵なので、汗だけでなく、雪がウェアの中に入らないようにすることも重要です。

登山中にはなるべく汗をかかず、無理なく歩けるペースを意識しましょう。

(2)保温性のあるウェア・登山靴を着用

保温性のあるウェアは、冬山では必須。アウターには、ゴアテックスなどの防水・透湿性、防風性に優れたハードシェルを選ぶといいでしょう。

ハードシェルなど厚手のアウターがない場合は、レインウェアでも代用がききます。

レインウェアは生地が薄いので、フリースや保温性のあるインナーなどを重ね着して、しっかり防寒することをお忘れなく。

登山靴は、ハイカットモデルやアルパイン用がおすすめ。

ただ、私は冬山用の登山靴を持っていなかったので、2000m級の山の3泊4日雪中テント泊をソレルのブーツで乗り切りました(登山経験豊富な友人が大丈夫と言っていたから)。

結果、特に不自由さもなく、快適に暖かく過ごすことができましたが、歩行の安定感などは登山靴の方が優れているといえます。

また、靴下、手袋、帽子・バラクラバなどの小物も、保温性や耐久性があるものを選んで、なるべく肌が見えないようにコーディネートしましょう。

(3)登山中の手袋は外さない

行動食を食べるときや靴ひもを結ぶときは、つい手袋を外したくなります。

しかし、登山中に手袋を外すと手が冷えやすくなったり、濡れたりすることから、凍傷のリスクが高まります。

慣れていないと手袋をしたまま作業することは難しいのですが、基本的には外にいる間はずっと手袋を着けたままということです。

ちなみに手袋は防寒対策のため、薄手と厚手の2つの手袋を重ねて着用します。

(3)行動食や水分補給をしっかりと行う

夏山もそうですが、登山中は行動食を食べてエネルギーをしっかりと補給しましょう。

体温を維持するためにも、高カロリーなどおやつなどは必要です。

汗もじわじわかいているので、水分も補給も忘れずに。

(4)なだれに注意

雪山の代表的なリスクである「なだれ」。

冬山に登るときは、事前になだれが起きそうなポイントを調べておいて、行かないようにしましょう。

万が一も考えて、軽量スコップやビーコンなどの使い方も知っておくといいですよ。

(5)余裕のある登山計画を組む

冬は陽が落ちるのも早く、雪の影響で思ったように進めないことも多くあります。

あせって山頂を目指すと思わぬ事故に遭うこともあるので、登山計画にはゆとりを持たせましょう。

登山では、ときに撤退する勇気も必要です。

まとめ

山頂から見る 絶景の雲海

冬山と夏山では、山の雰囲気が全然違うもの。

冬山は寒さが厳しく、看板や標識は雪に埋まり、吹雪くこともあります。

そんな環境にも関わらず、冬山登山をする人がいるのは、冬にしか見られない山の景色があるから。

雪化粧をした山肌や、青い空と雪のコントラストは幻想的な美しさです。

夏山よりも登山者が少ないぶん、昼も夜も静寂に包まれる時間が長いことも魅力といえます。