親御さんであれば「自然体験が子どもにどんな成長を与えるか」は気になるところですよね?
実際、登山やキャンプなど自然に触れる活動には、多くの教育的効果が期待できます。
子どもの成長に役立つからこそ、アウトドア関係団体や学校でも実施しているわけです。
しかし、それら自然体験は、子どもを成長させるきっかけにすぎません。
そこで得た経験を「楽しかった」の一言で片付けるか、人生全体に役立てるかは、環境も含めて本人次第です。
そこで今回は、自然体験と子どもの成長についてご紹介します。
自然体験指導者としての私の経験も交えて解説するので、ぜひ気楽に読んでみてくださいね。
自然体験は、子どもを成長させる“きっかけ”にすぎない
自然体験によって、子どもは創造性や探究心、自主性などさまざまな能力を養うことができます。
アウトドア団体などの組織が運営する教育キャンプに参加すれば、班での活動やスタッフとの交流もあるため、コミュニケーション能力も育つでしょう。
しかし、一度や二度の自然体験をしたからといって、急に子どもが成長するわけではありません。
自然体験で培われる能力は、およそ知識やスキルではない人間性の部分が大きく、短期間で変化または伸びるようなものではないからです。
そのため、日帰りや3泊4日のキャンプといった自然体験は、あくまで子どもを成長させる“きっかけ”を与える活動にすぎません。
言うなれば、学校の勉強やスポーツと同じように、繰り返しの学習や復習が大事なのです。
現実的に考えて、たった一回キャンプに参加したからといって、人間が飛躍的に成長することなどありえないですよね?
自然体験には確かに多くの教育効果が望めますが、キャンプや登山、収穫体験などどのような活動であっても、ある程度繰り返さなければ、大きな成長は見込めません。
だからこそ自然体験や野外活動プログラムの中には、1週間以上の宿泊型で、継続的かつ集中的にスケジュールを組んでいるものもあるのです。
読書だってそうですよね?
何か特定の知識を得るために本を読むときは、一冊だけを読むよりも、10冊くらいまとめて読んだ方が学習効果は高いとされます。
自然体験も似たところがあり、集中して取り組んだり、長期的に活動したりした方が教育効果を望みやすいのです。
自然体験を「教育」として見る場合、当然成長までには時間がかかるため、キャンプや登山、収穫体験などは、あくまで子どもを成長させる“きっかけ”を与える活動にすぎないといえます。
時間のない自然体験では「気づき」を与える
自然体験活動は、子どもに「気づき」を与えてくれます。
大きくは、以下の3つに分類できるでしょう。
- 自己への気づき
- 他者への気づき
- 自然への気づき
自分の感情や思いに気がつくこともあれば、人間関係についての発見だったり、自然への学びだったりと、気づきの種類はさまざまです。
私はかつてNPO団体経由で、小・中学生グループを対象に野外で課題解決ゲームを提供する仕事をしていました。
その活動では学校から事前に「プログラムに期待する効果」「子どもたちに身に付けさせたいこと」を提示してもらっていました。
以下は、実際にあった学校からの要望例です。
「意見が活発に出るようになる」
「協調性を養う」
「信頼関係を構築する」
「チャレンジ精神を養う」
「チームでの課題解決力を身につける」
課題解決ゲームは、たった3時間の活動であったのですが、さまざまなことが要求されていますよね。
学校側からの要望は、上記のような項目のうち2〜3つを組み合わせたケースが多かった気がします。
ただし先にご説明したとおり、自然体験活動を「教育」として見る場合には、成果が出るまで時間が必要です。
即効薬ではないため、一日や二日で劇的な変化は望めません。
書類の提出はNPO側が求めていたものなので、先生方も形式的な部分が少なからずあり、要望の全てを達成できるとは思っていなかったでしょう。
しかし、指導するこちらとしては、わずか3時間の中でも何かしらの成果を出さないといけません。
そのため、NPOの指導者の中には、子どもに「気づきを与えること」にフォーカスしてゲーム活動をする人もいました。
そして子どもに気づきを与えるには、振り返りが大切です。
むしろ活動を振り返る時間をとらないと、子どもに気づきを与えることは難しいでしょう。
具体的には、以下のような質問で振り返りをしていました。
【振り返りの質問例】
- 楽しいと感じたこと、良いと思ったこと
- グループの良かった点
- 上手くできたことと、その理由
- 友達に言われて喜ばれたこと、嫌だったこと
- 次のゲーム活動にも活かせそうなこと
「どんな気づきがあったのか?」を子どもに聞いたり、紙に書かせたりすることで、自分の中での発見を明確にしていきます。
自然体験にはさまざまな教育効果が期待できますが、「気づき」は子どもを成長させる基礎要素の一つだと思います。
あわせて読みたい >> 【簡単にわかる】自然体験が与える、子どもへの教育効果
体験で得た学びを日常生活で生かすことで、子どもは成長する
自然体験で得た「学び」や「気づき」は、学校や日常生活で生かすことが大切です。
しかし、火の起こし方やフラフープをくぐるコツなど、体験によっては普段の生活に応用しにくいものもありますよね?
その場合は、具体的な体験の抽象度を高めて、本質的な部分に目を向けてあげると良いでしょう。
【体験の本質を見抜く着眼点(例)】
- 「考える」
- 「アドバイスを受け入れる」
- 「試してみる」
- 「失敗してもいいからやってみる」
- 「やり方を変える」
火おこしでいえば、「火を起こせた」という結果に注目するのではなく、その過程を振り返ってみます。
「落ち葉を追加するアイデアを試してみた」「薪の並べ方を変えた」「とりあえず色々やってみた」などです。
火おこしのテクニック自体は、学校や日常生活で役に立たないかもしれませんが、「アイデアを試す」「色々やってみる」などはあらゆる場面で応用できるスキルです。
目に見える部分ではなく、思考やプロセスなど目には見えない部分に注目してみましょう。
体験で得た学びを学校や日常生活に応用できるかどうかは、体験の本質的な部分を見抜く視点や質問にかかっているといえます。
まとめ
数日間キャンプや登山などの自然体験をしたからといって、急に子どもが成長することはまれです。
テント設営や火の起こし方などの知識・技術は除き、体験の効果は目に見えないものがほとんどなので、「ウチの子、何も変わっていないのでは?」と思うこともあるかもしれません。
しかし、何度も子どもと自然体験をしたり、長期的に活動したりすることで、じわじわと効果が現れるでしょう。
学校の勉強やスポーツと同じく、自然体験も繰り返しや復習が大事なのです。
自然体験ではさまざまな教育効果が期待できますが、子どもに「気づき」を与えることは、自主性や探究心などあらゆる成長の基礎です。
自身の感情や気持ち、他者と協力する必要性、自然の不思議さなどの気づきは、きっと子どもを成長させるでしょう。
自然体験活動は教育活動だけでなく、レクリエーション活動でもあるので、単に「楽しかった」の一言で片付けることもできます。
しかし、振り返りによって子どもの学びや気づきを明確にできれば、自然体験で得た学びを、学校や日常生活にも活かせるでしょう。
教育は時間がかかるものなので、ぜひ長い目で子どもの成長を見守ってあげてみてくださいね。