初参加の活動やビジネスの会議・研修などで、「緊張する」「空気が重い……」と感じたことはありませんか?
仮に知った顔が集まっていたとしても、場所や活動が変わると、妙に緊張してしまうこともあります。
アイスブレイクは、そんな緊張感のある雰囲気を和らげるためのコミュニケーション手法です。
多くは簡単なゲーム活動で、子どもの野外活動からビジネスにまで使えるため、1つか2つ覚えておくときっと役に立つでしょう。
そこで今回は、アイスブレイクのメリットやゲーム例についてご紹介します。
アイスブレイクをする際のNG行動についても、子どものチームビルディングやゲーム指導経験のある私が、わかりやすく解説していきますよ。
アイスブレイクとは?
アイスブレイクとは、参加者の緊張感を解きほぐし、話しやすい雰囲気をつくるための活動を指します。
多くの場合は、声を出したり、体を動かしたりする5分程度の簡単なゲームを行います。
では、なぜアイスブレイクが必要なのでしょうか?
会議や研修、講座などに参加する人は、初めてであれリピーターであれ、さまざまな感情を抱えています。
- この人はどんな人なんだろう
- 私は場違いじゃないかな?
- これから何をやるの?
こういった参加者が抱える不安や心配、照れなどは、場のぎこちない雰囲気や緊張感として現れます。
アイスブレイクは、このカチカチになった緊張感を氷(アイス)に見立てて、一気に打ちこわしていく(ブレイク)手法です。
正直、アイスブレイクをしなくても、会議やグループワークなどの本題活動はスタートできます。
しかし、参加者が緊張したままメインの活動をスタートさせても、「意見が出ない」「沈黙が続く」といった状況に陥りやすくなるでしょう。
そのためまずはアイスブレイクで笑いを起こしたり、お互いに話をさせたりして、場の雰囲気を和ませることがあります。
会議や新人研修から子どもの野外活動まで、アイスブレイクはコミュニケーションを円滑に進めるために欠かせない手法です。
アイスブレイクのメリット
アイスブレイクは本題に入るにあたって、相応しい雰囲気をつくるための活動です。
ただし、緊張を解きほぐすことだけが、アイスブレイクのメリットではありません。
アイスブレイクには、以下のようなメリットがあります。
- お互いの名前を覚えられる
- グループに仲間意識を感じるようになる
- 気持ちのリフレッシュ
- グループ分けができる
アイスブレイクには、お互いの名前を覚えるためのゲームが複数あります。
たとえば、初めて参加する研修などで初対面の相手の名前や好きなことがわかって、ちょっと安心した経験はありませんか?
自己紹介などで「私は北海道生まれで、シャケが好きです」聞くと、少し相手に親近感を覚えやすくなりますよね。
またアイスブレイクは、リフレッシュにも使えます。
早朝やお昼休み後の眠たい時間帯に、目覚ましとしてアイスブレイクをするといった具合です。
グループ分けは、ワークショップなどの場合に有効です。
たとえば「誕生月が奇数の人は右に、偶数の人は左に集まってください」といえば、体を動かしながら2グループに分けられます。
アイスブレイクには参加者の緊張を解きほぐすだけでなく、集中力を高めたり、コミュニケーションを生ませたりする効果もあります。
アイスブレイクをする際のNG例
アイスブレイクは簡単なゲーム活動なので、ゲームさえ知っていれば誰でも実践できます。
ただ、ゲーム選びや進行の仕方を間違ってしまうと、逆に場の空気が凍りついてブレイクのはずが「アイスホールド」になってしまうことも……。
ここでは私の経験をもとに、アイスブレイクを進行する際の注意点についてご紹介します。
いきなり身体接触
ボディタッチは相手との心理的な距離を縮めたり、親近感を高めたりしたいときに有効です。
しかし、最初のアイスブレイク(ゲーム)でやる活動ではありません。
初対面同士はもちろん顔見知りであっても、急に「手をつないでください」と言われれば、ほとんどの日本人は抵抗を感じます。
また、相手と目を合わせるなどの行為も、ハードルが高いと感じる人がいるので注意が必要です。
関係性ができていない状態での身体接触系のアイスブレイクは、止めておいた方がいいでしょう。
特定の参加者に恥ずかしい思いをさせる
よほど打ち解けた雰囲気でもなければ、みんなの前で変顔をさせるなどのアイスブレイクも避けた方が無難です。
恥ずかしいという観点でいえば、「今まで付き合った恋人の人数」などを自己紹介でさせるのも止めた方がいいですね。
「恥ずかしい思いをした」
「言いたくないことを言わされた」
となるとアイスブレイクどころか、参加者の心の壁を一気に高くしてしまう可能性があります。
グループ協力系のゲーム
お互いのことをよく知らない段階で、グループで協力する系のゲームをしない方がいいでしょう。
なぜなら、他のメンバーに思い入れがないため、チームワークでの達成感を覚えにくいからです。
たとえば、全員で一つのことをクリアするなどの課題解決ゲームですね。
グループで協力が必要なゲームは、場の雰囲気が和み、お互いの理解が進んだ後でやるようにします。
相手の名前も知らず、どんな人かもわからない人たちと課題をクリアしても、グループでの達成感や感動を覚えにくいですからね。
アイスブレイクとしては個々で成立するものかペアでできるものなど、もっと簡単なゲームでいいと思います。
会議資料を読むように進行をする
これは、市役所職員時代の私の体験談です。
各部署から数名が出席する全体研修があったのですが、そこで人事課の人がアイスブレイクをしようとしました。
でも、これがひどかった……笑。
だいたい、以下のような進行だったと思います。
人事課の人「アイスブレイクとは、場の雰囲気を和ませるための活動のことです。アイスブレイクには、▲▲というゲームがあります。このゲームはペアになって、〇〇する活動です。」
人事課の人・参加者一同「……(沈黙)」
人事課の人「……では、どうぞ。」
参加者一同「えっ!!?」
突然のアイスブレイク開始に一瞬、場の空気が固まったのを覚えています。
たぶん、この方はアイスブレイクをやるのが初めてだったのでしょう。
そうであれば、仕方のないことです。
ただ、ゲーム進行には流れがあるので、説明の仕方も工夫しなければなりません。
この場合はアイスブレイクをやる前に、「これからちょっと、このゲームをやってもらおうと思います。では、隣の人とやってみてください。では、どうぞ」と一言添えるだけでも、受け取る側の印象が違ってきませんか?
偉そうに言っていますが、私も今だからこそわかることです。
進行役だけテンションが高い
「アイスブレイクで盛り上げよう」という気持ちが強すぎて、進行役と参加者の間にテンションのギャップが起きることがあります。
気持ちはよくわかりますが、進行役がそこまで頑張る必要はありません。
明るい雰囲気での司会進行は大切ですが、実際にゲームをやるのも楽しむのも参加者自身です。
私も経験がありますが、アイスブレイクやゲーム活動は、参加者の状態によって全然盛り上がらないことがあります。
そういうものなのです。
ですから、進行役が無理にテンションを上げようとしなくても、参加者に前向きな気持ちがあれば、きっとゲームを楽しんでくれるはずです。
代表的なアイスブレイク例3つ
アイスブレイクには数多くの種類がありますが、「どんなアイスブレイクを選ぶか」は、目的や参加者によります。
目的とは、「アイスブレイクでどんな雰囲気をつくりたいのか」です。
そこに、参加者の人数や関係性、身体的能力などの要素が絡んできます。
ここでは代表的なアイスブレイクについて3つご紹介するので、目的に合わせて選んでみてくださいね。
(1) じゃんけん系
じゃんけん系のアイスブレイクは種類も豊富で、子どもの野外活動から室内活動にまで使えます。
シンプルなゲームなので、年齢に関係なくできるのがいいですね。
たとえば、進行役とじゃんけんをして参加者に勝ってもらう、負けてもらうといった遊び方があります。
参加者同士のコミュニケーションを促したいのであれば、「グループの人とじゃんけんをして3連勝してください」といったルールで、交流の機会を増やすこともできます。
じゃんけんは座った状態よりも体を動かしながらやった方が、緊張もほぐれて、場の雰囲気も和みやすいでしょう。
(2) 自己紹介系
自己紹介系のアイスブレイクは、研修や会議などの室内に向いています。
自己紹介系のゲームも種類が豊富ですが、ポイントは名前のほかに「どんな内容を自己紹介させるか」です。
たとえば、名前に加えて「得意なこと」「子どもの頃に好きだった遊び」などを追加すると、会話も弾みやすくなるでしょう。
自己紹介は「課長の〇〇です」と肩書きだけ言われてもとっつきにくいですが、「子どもの頃に好きだった遊び」などが入ることで、グッと親近感を抱きやすくなります。
それに自分の好きなことであれば、話もしやすいですよね?
コミュニケーション力を高めたいのであれば、“ 他己紹介 ”で全員の名前を覚えているかどうか、一人ずつ言ってもらうのもおもしろいでしょう。
“ 他己紹介 ”では「誰だっけ??」となりやすいので、自然と参加者同士に関わりが生まれます。
自己紹介系は道具がなくてもできますが、参加者の相互理解を深めるのであれば、紙とペンを用意するのがおすすめです。
紙に書いた方が相手も覚えやすいですし、研修であれば壁に貼っておくと休み時間などに見直せます。
(3)リフレッシュ系
気分をリフレッシュする系は、子どもの活動からビジネスにまで使えます。
たとえば、“ 1分間当てゲーム” とかですね。
進行役が時間を計測して、参加者は「1分」と思ったときに手を挙げます。
「ちょっと長いな」と感じるときは、40秒とかでもいいかもしれません。
あとは、“ボールがどんどん重くなる” ジェスチャーゲームとかですね。
やり方も簡単です。
参加者同士が円になって、実際にボールがそこにあるかのようにボールを持ち、隣に順に渡していって一周させます。
次に進行役が「このボールは不思議なボールで、隣に渡すたびに重くなっていきます」といってスタートします。
初めは風船のように軽く、後半になるほど鉄球みたいに重くなるイメージです。
あとは、参加者の演技の世界です。
このあたりは参加者の関係性や照れにもよりますが、ジェスチャーはやりすぎるほどおもしろくなります。
アイスブレイクやゲームについて詳しく知りたい方には、以下の本がおすすめですよ。
大人の参加者ほど、アイスブレイクの必要性を説明しないといけない
小学生などはゲームに乗りやすいので、比較的アイスブレイクも楽しんでもらいやすいといえます。
ただし、問題は大人の場合です。
肩書きのある人やレクリエーションゲームにあまり理解のない人だと、「何でこんなことやらなくちゃならんの」と思う人もいます。
その場合にはアイスブレイクを始める前に、目的と効果について簡単に説明する必要があるでしょう。
「いつも会議で意見が出にくいので、今日は先にアイスブレイクをしてみたいと思います。」
「お昼の後で眠い人も多いと思うので、眠気覚ましに体を動かしてみましょう」
「今後チームで協力していくためには、相互理解が不可欠です。このアイスブレイクはそのための準備運動です」
などです。
大人でなくても中学生や高校生くらいになると、「こんなのやってられない」「意味あるの?」と思いやすくなります。
そのためアイスブレイクの進行役は、参加者に積極性が欠けているようと感じたら、アイスブレイクの目的や効果について事前に説明してあげるといいでしょう。
説得するというよりは「これはただの遊びではなく、ちゃんと意味のある活動です」と伝えるイメージですかね。
それでも理解されないこともありますが……。
アイスブレイクをする際は、活動に理解のある人もいれば、そうでない人もいるということを一応頭に入れておくといいでしょう。
まとめ
アイスブレイクとは、参加者の緊張を解きほぐし、場の雰囲気を軽くするコミュニケーション手法です。
多くの場合は体を動かしたり、声を出したりする簡単なゲームをします。
本題に入る前にアイスブレイクをすると、話しやすい雰囲気がつくれたり、お互いの理解を深めたりできるメリットがあります。
ほとんど遊びのような活動なので、「こんなこと意味あるの?」と思う人もいるかもしれませんが、遊び感覚でできる活動だからこそ笑顔が生まれやすく、グループの雰囲気が良くなりやすいのです。
アイスブレイクは決して、進行役が一人で頑張るものではありません。
「意見が言いやすい」「自分らしくいられる」などの心地良い場の雰囲気とは、参加者の協力や積極性があって初めて成り立つものです。
司会進行役の人はあまり背負い込みすぎずに、ぜひ気楽な気持ちでアイスブレイクを取り入れてみてくださいね。