野外教育をビジネスとして成功させるには、”エンターテイメント化”が不可欠

野外教育をビジネスとして成功させるには、”エンターテイメント化”が不可欠

野外教育は、自然体験や野遊びなどを通じて人間性を伸ばしていく教育手法です。

私は市役所職員として子どもの自然体験活動の企画・運営を行なったことがきっかけで、野外教育に興味を持ちました。

アウトドア専門学校にも通い、登山やキャンプ、野遊びなどの企画を実践し、安全管理技術も身に付け、卒業後は独立して野外教育・自然体験指導者として仕事していきたいと思ったものです。

しかし、いざフリーランスとして活動してみると、自分のやりたい方向性もあってか思うように仕事にできず、現段階で野外教育をビジネスとしてやっていくのは困難であると感じました。

しかし、まだ心のどこかでは「この分野を仕事にできたら」と思っています。

今回のこの記事は、これまで書くのを躊躇していました。

あまり知られていない分野とはいえ、批判もあると思ったからです。

ただ、私のようにボランティアではなく、野外教育をビジネスとして成功させたい人がいるかもしれないと思い、書くことに決めました。

この記事が今後「野外教育をビジネスにしていきたい人」「野外教育で収益を上げたい人」の参考になればと思います。

多くの野外教育指導者は、学者や研究者であってビジネスマンではない

個人や団体など、野外教育を実施している形態に関係なく、多くの野外教育指導者は学者や研究者に近いもので、ビジネスマンではありません。

私はこれまで、学校での野外活動や子ども向けキャンプなどの野外活動を行う、さまざまな個人や団体を見てきました。

彼らは自然やアウトドアに関する深い知識と技術を持ち、スタッフとしての経験も豊かです。

野外活動のスキルアップ体験会や野外教育についての会議、各種セミナーにも時間を割いて参加しています。

しかし、営業やマーケティング、価格の決め方などビジネスの経験や知識についてはあまり持ち合わせておりません。

私は野外教育を仕事にすることに対して挫折した人間ですが、野外教育も保険やイベント会社と同じように一つのビジネスだと思っています。

趣味やボランティアではなく、仕事としてやっていきたいのであれば、営業・マーケティングや経営手法などビジネスの勉強は不可欠です。

自我を捨て、顧客の行動心理を分析してイベントや企画に落とし込むことができれば、結果も変わってくるでしょう。

野外教育をやっている人に限ったことではありませんが、サービスや商品を上手く顧客にアプローチすることができず経営に苦労しているのは、教育に関する勉強や話し合いばかりに目がいき、ビジネスの勉強を疎かにしているからでしょう。

独学でも正社員でもいいので、野外教育という分野で売上げを上げ、収益を継続的に得るためには、「野外教育も立派なビジネスである」という自覚と行動が欠かせません。

野外教育をビジネスとして成功させるために必要な3つの視点

野外教育指導者は自然やアウトドアに関することについてはプロですが、経営を成功させるためのビジネス分野については詳しくないことが多々あります。

そのため野外教育の同業者だけに話を聞いていても、収益性の向上はあまり期待できないでしょう。

ここでは、私になりに分析した、野外教育をビジネスとして成功させるために必要な視点について解説します。

(1) ビジネスとして野外活動を成功させたいなら、「教育」の概念を捨てる

ハイキング

今後もしくは現在、野外教育を仕事としてやっていきたいのであれば、一度「教育」という要素を忘れる必要があります。

小・中学生などを対象にすることが多い野外教育には、企画の段階で参加者に「こうなってほしい」という目標設定が決めますが、これがビジネスとして邪魔をすることがあります。

しかし、商品やサービスが売れるためにはユーザーの満足度を満たすことが必要であり、社会的に需要があるものでないと仕事として成立しません。

野外教育についての学術知識や話し合いばかりしていたのでは、意味がないのです。

そもそも「教育」とは他者にモノを教えることです。

そのため、野外教育に自己成長や異年齢との仲間づくり、自然への理解などを求める人に「教育」という要素はぴったりですが、実際にはこのような教育を期待して参加してくる人は少数派といえます。

これが学校行事や親が子どもに強制的に参加させる場合には、どんな目標を掲げていようが、がっちりした教育的プログラムであろうが自由でもいいでしょう。

しかし、土日や連休といった休日に「自分を成長させたい」「里山や自然について深く学びたい」と思ってイベントに参加する人がどれだけいるでしょうか?

当然ゼロではありませんが、ビジネス視野を広く持った場合、マーケット的には圧倒的に少ないことに気がつきます。

【休日の過ごし方(世間の興味)】
全ての余暇活動(本、映画、ゲーム、グルメ、遊園地、ショッピング、アウトドア…)
アウトドア&野外活動(登山、キャンプ、お花見、ラフティング、トレラン、スキー・スノボ…)
野外教育
自己実現(知りたい、学びたいなど)

近年アウトドアや野外活動が流行っているとはいえ、それでも実際にやっている人はそれほど多くはないと思います。

そのアウトドア中で野外教育は、さらにマーケットを狭くした分野です。

企業サービスが目標と違うのは、消費者の悩みや問題を解消するものか、そうでないかです。

野外教育は消費者の悩みや問題を解消するというよりは、人間的成長にプラスになることを提案する活動です。

つまり、野外教育の目標はこちらが参加者に期待する効果や要望であり、参加者が必ずしも求めているものではないのです。

そもそもの軸を壊すようですが、野外教育では「教育」という要素に縛られている限り、参加するだけの興味のある人はより狭くなります。

いかに素晴らしい教育内容やプログラム、目標を掲げたとしても、そこに需要がなければ、集客も難しく、成功はおぼつかないでしょう。

(2) 野外教育をビジネスとして成功させるなら、”エンターテインメント化”が不可欠

子どもとカエル

私は、野外教育の分野で収益をあげたいのであれば、エンターテイメント化が不可欠だと思っています。

ただしこれは、自由参加型の野外教育イベントの場合であり、学校行事などの絶対参加による野外活動はまた別です。

野外教育を“エンターテイメント化する”ということは、企画(イベント)の遊びや娯楽の要素を強めることであり、参加者に「こうなってほしい」という目標に向かってプログラムを進める、本来の野外教育からは離れることになります。

それでも私がエンターテイメントにシフトする必要があると主張するのは、参加者の多くが教育よりも遊びや気晴らしを野外活動に求めているからです。

実際、ラフティングやジップライン、ボルダリングといった活動が人気を集めているのは、それが企画者が狙う目標に向かって進む活動ではなく、参加者が自由に楽しめる娯楽や遊びに近い、エンターテイメント活動だからです。

もしラフティングが教育活動であれば、仲間と仲良くする、〇〇川の歴史について理解する、勇気を持って行動するなど、スタッフ側には活動に対する目標があります。

目標があるということは、参加者にはそれを達成できる行動を促すはずです。

でも、多くはそんなことはないはずです。

参加者は特に制限もなく、多少の気づきや学びはありながらも自由に楽しめて、「あー楽しかった」で終わっているはずです。

この自由度の高さ、無制限さが私のいう「エンタメ化する」ということです。

そもそも野外教育がビジネスとして成り立つのであれば、もっと大企業や有名メーカーがこの領域に参入しているでしょう。

それがないのは、野外教育という分野が収益性が低いわりに、ケガや賠償などのリスクが高い活動だからです。

企業が子ども向けキャンプや登山などを、CSRや環境保全活動といった社会奉仕に止めていることからも収益性の低さが伺えます。

そのため、野外教育をビジネスとしてしていきたいのであれば、見習うべきはディズニーやリアル脱出ゲームなどであり、自然学校やNPO法人のノウハウではありません。

売上げを気にする仕事である以上、提供するプログラムが世間に需要があるかがカギになります。

(3) 教育の要素は、世間が求めるニーズに応えた上で盛り込む

野外炊事の洗い場

ここまでで野外教育をビジネスとして成功させるには、教育の要素を捨て、エンターテイメント化する必要があると伝えました。

こうなるともは野外教育ではなく、単なる野外活動にすぎません。

しかし、ここからがスタートです。

世間の需要をベースにプログラムを構築した上で、 野外活動指導者としてのプロの視点や知識、技術を駆使して、教育的要素をプログラムに盛り込むのです。

たとえば、トップミュージシャンなどはこういった手法を使っています。

自分たちのやりたい音楽や個性を優先させるのではなく、まずはファンが聞きたい音楽を届けることを意識する。

その上で、自分たちの個性を追加するという順番です。

自分たちのやりたいことをやっているだけでは、必ずしも人は付いてきません。

顧客の需要や求められていることを満たす中で、初めて個性も生きてきます。

スピッツの曲のコンセプトは「死と性」

前述したように、エンターテイメント化した野外教育では、顧客が求めていることを最優先にして、教育(個性)は後から追加します。

たとえば、私はスピッツが好きなのですが、歌詞を担当するボーカルの草野マサムネさんの曲づくりのコンセプトは「死と性」です。

あのキャッチーで爽やかな楽曲からは想像もつかないかもしれませんが、そうなのです。

スピッツファンには結構知られていますが、「ロビンソン」や「スパイダー」などの歌詞を深く読んでみると、「実は怖い歌詞かも…」ということに気づきます。

これがもしも、マサムネさんが「死と性」をダイレクトに歌詞や音で表現していたとしたら、おそらく今のような国民的人気バンドにはなっていなかったでしょう。

彼らは自分たちの曲をファンに届けやすい形に昇華させ、その上で自分たちらしさ(個性)を発揮することで、あれだけの人気を獲得したわけです。

言うなれば、これがプロです。

話は戻りますが、野外教育をビジネスとして成功させるには、まずユーザー目線に立って、世間が求めている楽しさや遊びを企画にすることが大切です。

その上で、野外教育指導者としてのプロの視点から、教育的要素を企画に落とし込んでいくことが必要なのではないでしょうか。

自然との関わり方や知識を与える教育的要素も必要

森の中で探検

ここまでで、一度「教育」の概念を捨てて、世間の需要に合わせたプログラムを作ることがビジネスでは大事だと伝えてきました。

ここまでくるともう「野外教育」という概念も崩壊しているので、「野外教育なんて必要ないんじゃない?」と思うかもしれませんが、私はそうは思いません。

森や水、土のことなど自然の知識や人への影響は、自然のことを知っている人しか教えられないからです。

教育の要素なしのイベントで「楽しかった」「おもしろかった」で終わるのもいいかもしれませんが、誰かが「ここにスギが植林された理由は…」など言わないと、一生その参加者は「スギが植林された理由」を知らないままかもしれません。

場合によっては、参加者がその話に興味を持ち、そこから自分で調べたり、再びイベントに参加するきっかけになるかもしれないわけです。

何に対してもいえることですが、言葉にしないことには相手が興味を抱くことも、気づくこともありません。

相手の興味関心を探りながらも、知っておいてほしいことはしっかり伝えるべきかなと思います。

まとめ

夕日と少年

多くの野外活動指導者は、自然やアウトドアの知識や経験こそ豊富ですが、ビジネスの勉強はほとんどしていないといえます。

趣味やボランティアではなく、売上や収益を考えて野外教育をするのであればビジネスの勉強は不可欠です。

今後、自由参加型のイベントで野外教育を実施し、ビジネスとして成功させたいのであれば、世間の需要に耳を傾け、「楽しさ」や「遊び」などエンターテイメント要素を強める必要があるでしょう。

ポイントになるのは、一度、参加者への目標設定も捨てて、参加者が求めるかたちでプログラムを作れるかどうかですね。

その後で、野外教育指導者としてプロの視点から教育的要素を企画に落とし込むようにしていきます。

野外活動は単に「楽しかった」で終わるよりも、適度に自然と人との関わりや道徳的なことなど教育的要素を盛り込んだ方が、参加者の心や頭も刺激され、より人生を楽しめるようになる気がします。