自然体験プログラムは、自然に親しみながら、学びを促すための活動計画です。
学校教育や社会教育を問わず、目的のある体験活動を行うときには欠かせません。
しかし、自然体験プログラムと聞いても、どこかわかるようなわからないような印象があるため、こんな悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか?
- 自然体験プログラムの作り方がよくわからない
- 体験活動の効果が実感できない
- いつも、ねらい(目的)が上手く達成できない
そこで今回は、自然体験プログラムの作り方についてご紹介します。
対象は小学生から中学生としていますが、幼児教育にも応用できると思いますよ。
自然体験プログラムとは
自然体験プログラムとは、自然との触れ合いを通じて、自然への理解や人間性の向上などさまざまな学びを促してていく活動計画のことです。
多くは組織や団体によって、何かしらの目的を持って実施されます。
自然体験プログラムを構成するのは、アクティビティと呼ばれる一つ一つの活動です。
アクティビティには、登山や水遊び、虫取りなどの自然遊びからクラフト、農業体験、生物調査、環境関連の講習会、野外救急法などがあり、その種類は多岐に渡ります。
自然体験プログラムは、そのアクティビティを一つ、もしくは複数組み合わせたものです。
自然体験プログラムには、企画実施に必要な情報を網羅的に記載しますが、活動時間やスタッフの動きを確認する用紙でもあるため、“ スケジュール表”とも呼ばれます。
自然体験プログラムは、学校教育と社会教育とでは異なる
参加者に気づきや学びを促すための自然体験プログラムは、学校や社会教育を行うNPO法人など各所で実施されています。
しかし、学校教育と社会教育とでは、自然体験プログラムの作り方に違いがあります。
それは学校とNPO法人、株式会社では、組織の存在理由や目的、置かれている立場が違うからです。
以下は、自然体験プログラムにおける学校教育と社会教育との違いです(一部)。
参加の自由度 | 参加者ニーズ | 年齢 | 活動の選び方 | |
学校教育 | 強制参加 | 満たさなくても 成り立つ | 同年齢が中心 | 学習指導要領に沿った活動 |
社会教育 (行政、NPO法人など) | 自由参加 | 集客するなら 満たす必要がある | 異年齢が中心 | 自由に選べる |
学校教育は全員参加であるため、子どもはやりたくなくても活動に参加しないといけません。
アクティビティ(活動)は、学習指導要領を達成できる内容を選ぶことになります。
一方で、市役所が運営する夏のキャンプなどは、社会教育に属するため自由参加です。
そのため企画側は、子どもが参加したくなるプログラムを作らないと事業が開催できません。
ただし、社会教育は学校教育よりも活動の自由度が高いため、1日や数日間かけたプログラムが作りやすくなっています。
人によっては「学校教育と社会教育の違いなんて、どうでもいいよ」と思うかもしれませんが、自分が所属する業界の特徴を知っていないと、プログラムを実施した際、思ったような成果が出ない可能性があるので注意しましょう。
子どもが成長する、自然体験プログラムの作り方
ここからは、具体的な自然体験プログラムの作り方についてご紹介します。
プログラムの記載事項は、実施団体や活動によって細かい点が変わってくるので、あくまで目安とお考えください。
1、プログラム(スケジュール表)に記載すること
自然体験プログラムを作るときには、以下のことを記載します。
記載すること | 補足 |
ねらい(目的) | 企画側の思いや活動目的、目標。 |
日にち | ー |
企画名 | 集客が必要なら、ネーミングは大事 |
スタッフ | ー |
参加対象・人数 | ー |
活動場所 | 活動するフィールド |
予算 | ー |
スケジュール | 集合時間、休憩時間、スタッフの動きなども含んだ、全体スケジュール |
持ち物 | 参加者に必要な持ち物 |
準備物 | プログラムに必要なすべての備品 |
安全管理・緊急時の対応 | 緊急時の対応策、近隣の医療施設など |
自然体験プログラムには、上記のように活動概要を記載します。
ただし、これ一枚にすべての伝達事項を書く必要はありません。
特にアクティビティを含むスケジュール部分は、活動説明やスタッフの動きなど情報量が多くなりやすいため、別紙で作成することもあります。
以下に、私が作った自然体験プログラムの例を貼っておくので、良かったら参考にしてみてくださいね(ダウンロードもできます)。
2、自然体験プログラムを作るときの流れ(作業手順)
初めて自然体験プログラムを作る人であれば、「どこから手をつけていいかわからない……」と悩んでしまいますよね?
プログラムを作りでは、事前準備が多岐に渡るため、作業が前後することもありますが、だいたい以下のような手順で進行していきます。
【自然体験プログラムを作るときの流れ(作業手順)】
プログラムを作る(大まかに)
▼
ねらいを決める/参加者ニーズを調べる
▼
場所を決める
▼
アクティビティを選ぶ/活動内容(仮)
▼
活動場所の事前調査や下見、試作
▼
・安全管理対策(危険箇所、禁止事項、近隣の医療機関の把握)
・スタッフ配置を考える
・参加者の募集や広報
▼
・細かなスケジュール表を詰める(各アクティビティの活動時間や手順、担当ごとの動き、準備物など)
・スタッフとの打ち合わせ(スケジュールの全体説明、ねらいの共有、役割分担など)
・シミュレーション
▼
(当日)プログラム実施
▼
・保護者に報告会
・スタッフとふりかえり
自然体験プログラムを作るときは、まず決まっていることから記載していきます。
たとえば、ねらい(活動目的)や日にち、参加人数、活動場所などです。
社会教育団体で集客もする場合は、ねらいと一緒に、参加者ニーズも検討します。
スケジュールについては、現地下見やフィールド調査をしないと決められない点もあるため、最初はざっくりとした内容で構いません。
必要な情報が集まった段階で、スタッフの動きや安全管理対策などをプログラムに追記(または修正)していきます。
自然体験プログラムを作るときの5つのコツ
自然体験プログラムは、参加者が楽しみながら学べ、スタッフも安心して取り組めるように作成する必要があります。
細部まで考え抜かれたプログラムであるほど、教育効果の高い自然体験プログラムとなるでしょう。
1、教育目的なら、最初にねらいを決める
目的のある体験活動において最初に決めるべきは、活動のねらい(目的)です。
同じアクティビティを実施するにしても、ねらいがない場合、「あー、楽しかった」だけで体験が終わる可能性があります。
楽しむことだけを目的とした野外活動であればそれもいいと思いますが、教育目的ならば、先にねらいを決めるようにしましょう。
また、社会教育で集客が必要なプログラムの場合は、ねらいと合わせて、参加者ニーズも調査します。
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2、全体の流れを意識する
自然体験プログラムでは、全体の流れを意識することが大切です。
たとえば、午前中に釣りの体験して、午後に郷土料理作りをするとします。
この場合、自然体験プログラムでは、「釣り」と「郷土料理作り」に関係性を持たせることが良しとされます。
釣りをしてこの地域でよく捕れる魚介類を学び、その魚を使った郷土料理作りを体験する、などです。
ただ、すべてのプログラムでここまできっちりとした関係性を作ることは難しいでしょうから、せめてアクティビティを並べただけのプログラムにならないようには気をつけたいですね。
3、スタッフとねらい(目的)を共有する
活動のねらい(目的)は、必ずスタッフと共有しておきましょう。
なぜなら、スタッフとねらいを共有していない場合、本番でやってほしくない行動を取ったり、やってほしい行動をしてくれない可能性があるからです。
たとえば、活動のねらいに「異年齢グループで協力して、困難を乗り越える」があったとします。
そこに、活動の目的がよくわかっていない引率の校長先生などが出てくると、子ども同士で解決してほしい課題に対して、「こうしたらいいじゃない」と余計なアドバイスをする結果になりかねません。
こうなると、せっかくのプログラムも台無しです。
事業担当者は、事前にミーティングで「こういう目的で活動するので、こう行動をしてほしい」と、スタッフに伝えておくといいでしょう。
4、スケジュールに余裕を持たせる
プログラムを作るときは、スケジュールに余裕を持たせるようにします。
「次はこれ」「次はこの活動」とスケジュールをぎゅうぎゅうに詰めると、参加者は疲れてしまいますし、スタッフも時間に追われ続けることになるため大変です。
スケジュールに余裕があると、「野外炊事の片付けに時間がかかった」など予想外のトラブルにも対処しやすくなるので、良いことづくめです。
5、ふりかえりの時間をつくる
私たちは、人に言われて初めて自分の感情に気がついたり、ハッとしたりすることがあります。
ふりかえりは、体験活動で得た学びや思いを気づかせてくれる活動です。
学校や日常生活で体験を活かせるかどうかは、ふりかえりがカギを握っているともいえるでしょう。
ふりかえりのタイミングは、活動内容によって異なりますが、参加者の熱が冷めないうちにやるべきです。
体験活動の効果は、時間が経過とともに薄れていくので、日帰りプログラムならばその日のうちにやりたいですね。
小グループでの話し合いや作文、簡単なアンケートなど、参加者の年齢や能力に合わせた手段を取るといいでしょう。
自然体験プログラムを作るときの注意点
自然体験プログラムを作るときの注意点としては、以下の2つがあります。
ねらい(目的)が形だけになっている
時々、自然体験プログラムで、ねらいが形だけのものになっているケースを見かけます。
別の言い方をすると、活動目的とアクティビティが結びついておらず、バラバラなのです。
たとえば、中学生の登山で、ねらいを「仲間と協力して困難を克服し、自然の大切さを感じてもらう」と決めた企画があったとします。
しかし実際は、ただ山頂へ向かって必死に歩くだけの活動でした。
登山であれば、手を差し出すなど仲間との協力は自然とあるかもしれませんが、中学生が「自然の大切さを感じる」には、自然解説やスタッフの声かけがないとさすがに無理でしょう。
もしかしたら「自然は気持ちいい」と感じてくれるかもしれませんが、ただ歩いているだけで「自然の大切さ」には気づけません。
しかし、自然体験プログラムでは、そういうことがよく起きるのです。
自然体験プログラムのアクティビティを考えるときは、ねらいとリンクしているか確認するようにしましょう。
アクティビティが、参加者の年齢や興味に合っていない
アクティビティは、参加者に合わせて考える必要があります。
参加者の年齢や体力、能力、精神面に配慮してプログラムを組めれば、参加者は楽しさを感じやすいですし、満足度も高くなるでしょう。
アクティビティを実施するときは、参加者に合わせてルールや難易度を調節したり、活動時間を増減したりアレンジするようにします。
シミュレーションをして、より質の高いプログラムに仕上げる
初めて自然体験プログラムを作る人には少し難しいかもしれませんが、一通りプログラムが完成した後は、頭の中で活動をシミュレーションしてみることをおすすめします。
以下は、事前に企画をシミュレーションメリットです。
- トラブルを未然に回避できる(安全管理体制の強化)
- 必要な道具や対応など不足に気がつく
- 当日ハプニングが起こっても、慌てずに済む
- 活動の細部までケアできることで、参加者の満足度が高くなる
- より教育効果の高いプログラムに仕上がる
シミュレーションはできる範囲で構わないのですが、当日集合から挨拶、アクティビティ説明、スタッフの動きなど、自分の役割を中心になるべくリアルにイメージをします。
スケジュール全体を脳内体験していくと、「ここで参加者は騒ぐかもしれない」「この場合こんなトラブルが起きるかも」といったことに気づけるのです。
自然の中では予想外の出来事が起こりやすいものですが、シミュレーションでトラブルを予見しておくと、万が一のときも冷静に対処できますよ。
まとめ
自然体験プログラムは、自然との触れ合いを通じて、自然への理解や人間性の成長などさまざまな学びを促していく活動計画です。
プログラムは最初にねらいを決めて、日にちなど決まっている部分から記載していきましょう。
自然体験プログラムを作るときは、全体の流れを意識することが大切です。
アクティビティ同士に関係性を持たせ、ねらいを達成できる活動が作れると教育効果は高まります。
参加者が楽しみながら、成長していける自然体験プログラムを作ってみてくださいね。