自然体験活動で、ねらいとニーズのどちらを優先させるべき?PRを含む

教育を目的とした子どもの野外活動の企画を立てるときは、活動のねらい(目的)を決めます。
企画によっては、そこに参加者ニーズも加えないといけない場合もあるでしょう。
しかし「いくら考えても、ねらいとニーズの妥協点が見つからない……」「どちらを優先させればいいかわからない……」と悩むこともあるのではないでしょうか?
私は子どもの体験活動の企画立案をしていて、何度もこのような悩みに直面してきました。
どちらも優先させたいけれど、どうも両者が上手く合わないという感じです。
そこで今回は、ねらいとニーズのどちらを優先させるべきかについて、子どもの教育指導に10年以上携わっている筆者が解説します。
ねらいとニーズはぶつかりやすい

まず、覚えておいておきたいのは、ねらいとニーズはぶつかりやすいということです。
ねらいとは『主催者側の思い』、ニーズとは『世間の思い』です。
主催者側の「こんな企画にしたい」「参加者にこうなってほしい」という思いと、参加者側の「こんな活動がしたい」「興味がある」という思いが衝突するわけですから、当然といえば当然です。
イベント主催者と世間(参加者)の気持ちが一致していればスムーズにことは運びますが、そうでない場合にはどうしてもぶつかってしまいます。
ねらいとニーズが衝突しやすいのは、両者の思いがぶつかるからなのです。
ねらいとニーズのどちらを優先させるべきか?

ねらいとニーズのどちらを優先させるかは、団体・組織の存在理由やイベントによります。
以下は、ねらい優先とニーズ優先で考えた場合のイベントの特徴です。
- 教育効果が高く、団体・組織の理念を達成しやすい
- 学校教育や集客を必要としない教育活動に向いている
- アクティビティが必ずしも参加者の興味関心とマッチしているとは限らないため、スタッフには参加者を楽しませる工夫やスキルが必要
- 集客が必要な場合、人が集まらない可能性がある
- 参加者の興味関心をもとにした企画であるため、参加満足度が高くなりやすい
- 自由参加のイベントに向いている
- ねらい(目的)をどう設定するかは、アクティビティに左右される
- 主催者側が望む教育効果を果たせない可能性がある
ねらい優先の企画でわかりやすい例としては、学校ですね。
学校の場合、学習指導要領に従って目的を達成していかないといけないため、児童・生徒の興味関心ばかりを聞いてはいられません。
児童・生徒の意思ばかりを尊重していたら授業は進みませんし、学級崩壊が起こる可能性もあります。
その点から学校の体験活動では、ニーズより、ねらい(目的)が優先されます。
ねらい優先でも活動が成り立つ理由としては、授業が強制参加であることも含まれるでしょう。
一方で、NPO法人などの社会教育関係の団体・組織の場合は少し違います。
社会教育の体験活動は自由参加であるため、学校をマネて、ねらい優先で突っ走ると「人が集まらない」「参加者がいない」といった事態が起こりえます。
そのため自由参加型のイベントでは、参加者ニーズにも応える必要があります。
社会教育関係の団体・組織、イベントにおいて、ねらいとニーズのどちらを優先させるかは非常に悩ましい問題といえますが、やはり最初は妥協点を探っていくことになるでしょう。
その場合には、ねらい優先とニーズ優先の極論で考えてみると、どちらに企画を寄せるべきか頭の中を整理しやすくなります。
体験自体がねらいだと、参加者ニーズにも応えやすい

体験活動によっては、「自然の中に出かけて遊ぶ」「釣りをする」「米の収穫体験」など体験自体をねらいとする活動もあります。
抽象的なねらいは、良くも悪くも活動が何でもいい状態となりやすいので、ニーズにも応えやすくなります。
たとえば、「自然の中で体を動かすこと」をねらいとした場合には、登山でもオリエンテーリングでも、泥遊びでもねらいは達成できます。
米の収穫体験も体験自体が目的であれば、米の種類や自然の恩恵について説明する必要はありません(実際はやると思いますが)。
ただ、「自然の中で体を動かすこと」など体験自体をねらいとする活動は、目標があってないようなものになりやすいため、取り扱いには注意が必要でしょう。
それならばいっそ、ねらいや目的をなくして、ただの<体験活動><イベント>にした方がスッキリする場合もあります。
体験自体を目的とする企画はわかりやすく、ニーズとの調整もラクなのですが、ねらいから逃げるために「体験自体を目的にしよう」と考えるのは少し違うと感じます。
まとめ

体験活動の企画で、ねらいとニーズがぶつかることはよくあります。
なぜなら、ねらいは主催者側の思いが反映されたものであり、ニーズは世間の興味関心などの思いだからです。
どちらを優先させるべきかは、団体・組織の理念やイベント目的にもよるので一概には言えませんが、極論で考えたときに、どんな事態が起こるかは覚えておきたいものです。
ねらい優先の場合、主催者側の「こうしたい」「こうなってほしい」は達成されやすいですが、人が集まらない可能性があり、参加者が楽しめるかどうかはスタッフの力量によります。
ニーズ優先の場合、参加者の満足度は高くなりやすいですが、ねらいの設定はアクティビティに左右されるため、主催者側が望む教育効果が達成できるかはわかりません。
企画者であれば、ねらいとニーズのどちらも優先させたい気持ちは分かりますが、いくら妥協点を探っても、それが叶わないこともあります。
どっちつかずの企画になるくらいなら、時にはどちらかを犠牲にする覚悟も必要かもしれませんね。
Wrote this articleこの記事を書いた人
松崎 清央
自然体験教育者/イベントプランナー。【経歴】4年間市役所職員として、子どもの自然体験活動の企画・運営など青少年教育事業を担当。退職後はアウトドア専門学校に入学し、登山やキャンプなどの知識技術・安全管理・自然知識を学ぶ。その後、独学でWEBライティング技術を習得。ブログ月間1万5千PV達成。現在フリーランス。