新事業や企画など、さまざまな場面で必要となるアイデア出し。
良いアイデアがパッとひらめけば一番いいわけですが、なかなかそうもいきませんよね?
- 良いアイデアが浮かばない
- アイデア出しの方法が知りたい
- 何から考えていいかわからない
そんな誰もが苦労するアイデア出しですが、自然をヒントにしたアイデア出しについては、大手家電メーカー<シャープ>が参考になります。
そこで今回は、<シャープ>のネイチャーテクノロジーに学ぶ、アイデアの出し方についてご紹介します。
ヒット製品のアイデアがどのように誕生したのか、そのプロセスを確認してみましょう!
<シャープ>は自然からアイデアをもらい、製品を生み出している会社
大手家電メーカー・シャープは、動物や昆虫などの生き物特性をヒントに、数多くの製品を生み出している会社です。
自然の摂理をヒントに開発された技術は、“ネイチャーテクノロジー”と呼ばれています。
イルカやネコ、トンボなど、発想のヒントになった動物はさまざまです。
そんな大企業のアイデアの出し方からは、学ぶことが多くあるでしょう。
「自然」というのは、発想を得るための一つのテーマにすぎませんが、アイデアを出す際に「何かを参考にする」という点は、真似できるものがあります。
【5ステップで解説】<シャープ>に学ぶ!アイデアの出し方
ここでは、シャープのネイチャーテクノロジーを参考に、アイデアの出し方についてご紹介します。
5つのステップで、順に解説していきますよ。
(1) 課題やゴールを明確にする
アイデアを出したいときは、まず課題やゴールの明確化が必要です。
「何を解決したいのか」
「問題は何か」
「ゴールはどこなのか」など。
これらが明確でないと、使い物にならないアイデアや、とんちんかんなアイデアしか出てきません。
シャープの場合、エアコンの改良に当たって「省エネ化がしたい」というゴールがありました。
課題として言い換えれば、
「送風効率が悪い」
「消費電力が大きい」
ということです。
課題やゴールが明確になると、私たちはその一点に力を集中できるようになります。
たとえば、車を運転するとき、目的地(ゴール)を決めずに出発すると、どこにも到着できず、街中をウロウロするだけで終わるでしょう。
しかし、目的地が明確であればルートが定まり、一直線にゴールに向かって突き進めます。
アイデア出しでは、最初に課題やゴールをはっきりさせておく必要があります。
(2) 「ゴール」を意識して、自分に適切な質問をする
ゴールを設定した後は、次にそのゴールを達成するための適切な質問を考えて、自分にします。
理由は、問題解決に導く質問を自分に問いかけることで、脳がその答えを求めようと働くためです。
そうすると不思議にテレビや雑誌などを見たとき、役立つ情報が目に止まりやすくなり、有益な情報が集まってきます。
シャープの場合、ドライヤーの開発で質問の例があります。
課題である「(髪が早く乾くように)ファンの回転速度を上げる」に対して、開発担当者は「ドライヤー程度のサイズのファンで、高速回転に適した羽根形状を持つ鳥は?」という質問を自分に投げかけました。
結果、アマツバメという鳥から、目的達成のアイデアを得ています。
ここで重要なのは「どんな質問を自分に投げかけるか」です。
質問の質によって、ふわっとしたアイデアしか生まれないか、優れた発想が生まれるかが決まるでしょう。
ですから、ただの「質問」ではなく「適切な質問」なのです。
(3) 他ジャンルから学ぶ
発想のヒントは、思わぬところにあります。
同じ業界や仲間よりも、専門外の業種や全く関係のない分野からの方が、刺激的なアイデアがもらえることもあるのです。
シャープの場合も同様です。
先ほど例に挙げたエアコンの改良では、開発担当者が航空工学に精通していたため、当初は航空工学の知識をもとに、省エネ化を考えていました。
しかし、成果は思うように上がらず……。
では、成功のアイデアはどこから生まれたのかというと、たまたま出席した生物模倣学の学会からです。
そこでひらめきが生まれ、自社のプロペラファンに応用したところ成果が出ました。
「良いアイデアが浮かばない」というときは、自分と異なる業界や分野からヒントを探してみるといいでしょう。
(4) 分析、研究をする
課題解決に応用できそうなヒントが見つかった後は、分析・研究が必要です。
ヒントの対象を分析することで、仕組みや特性が深く理解できます。
この時点ですでにアイデアの問題はクリアしていますが、実行(応用)できなければ意味ないですからね。
シャープの場合、先ほどのドライヤーを例にとると、アマツバメを分析・研究しています。
具体的には、高速飛行を可能とする翼形状の分析です。
何かアイデアが見えたときは、似たような事例を徹底的に分析することで、カタチになっていくはずです。
(5) 振り返る
アイデアを実行したけれども成果が出ないときは、行動を振り返ります。
一般的に「PDCAを回す」というやつですね。
シャープの場合、ドライヤーの回転効率アップの改良で、3ヶ月成果が出ませんでした。
最初ドライヤーには、エアコンの改良で成功したアホウドリの羽根形状を応用しました。
しかし、エアコンとドライヤーとではファンの大きさも、必要な回転数も全く違うので、ドライヤーの課題である「回転速度を上げる」という目的が達成できなかったのです。
シャープはその経験を反省し、今度は小型の鳥であるアマツバメを応用して、課題を解決しました。
アイデアを実行に移して成果が上がらなかったときは、行動を振り返ることが大切です。
自然をヒントに生まれた<シャープ>の製品
ここでは参考までに、シャープのネイチャーテクノロジー搭載の製品を一部をご紹介します。
各製品は、
・課題
・手法
・結果
の4つでまとめました。
空気清浄機
シャープを代表する、あの “プラズマクラスター” 製品にも、ネイチャーテクノロジーが使われています。
プラズマクラスターNEXT搭載の空気清浄機がそうです。
アイデアのヒント:テントウムシ 課題:力強い風を送れるファンが必要 手法:従来のトンボファンを止めて、テントウムシの羽形状を応用 結果:パワー上昇。高濃度プラズマクラスターイオンが広範囲に届く |
エアコン
エアコン(室外機)は、シャープが初めてネイチャーテクノロジー応用した製品です。
ちなみにエアコンの室内機は、トンボの羽根形状をヒントにしていますよ。
アイデアのヒント:イヌワシ、アホウドリ、アマツバメ 課題:省エネ化 手法:3種類の鳥の翼形状をファンに応用 結果:送風効率がアップ。安定した風の吸い込みを実現 |
ドライヤー
ドライヤーには、鳥類最速といわれる “アマツバメ“の翼を応用しています。
シャープは、ドライヤーとエアコンに同じ鳥を応用して失敗した経験から、以降は1商品につき1動物で考えるようになりました。
アイデアのヒント:アマツバメ 課題:ファンの回転速度を上げる(髪が早く乾くようにしたい) 手法:アマツバメの翼形状をドライヤーファンに応用 結果:ドライ時間を約50%カット |
サイクロン掃除機
サイクロン掃除機に関しては、企画担当者が「掃除機にも、ネイチャーテクノロジーを使いたい」との思いからスタートしたため、当初、具体的な課題やゴールがありませんでした。
利用者のニーズ探しから始まり、その後「何の動物をヒントにすべきか」というアイデア出しに至った製品です。
アイデアのヒント:ネコ 課題:ゴミ捨て回数を減らすため、吸い込んだゴミを圧縮したい 手法:ゴミ圧縮ブレードに、毛づくろい時にまとめて毛を吐き出すネコの舌の構造を応用 結果:吸引ゴミの体積が、従来の1/15になった |
まとめ
アイデアが必要なときは、まず課題やゴールを明確にして、ヒントにできる素材や事例を探しましょう。
大手家電メーカーであるシャープは、自然からヒントを得てアイデアを生み出しています。
生存競争が激しい自然界には、私たちの想像をはるかに超えた仕組みや戦略があります。
画期的なアイデアを生み出すために、そこからヒントをもらうのもありですね。
「自然」からアイデアを得るというのは、あくまで一つの事例ですが、発想のヒントは、身近なところや思わぬところから見つかることがあります。
アイデア出しに行き詰まったときは、視野を広くして考えてみるといいでしょう。
【アイデアの出し方 5ステップまとめ】
(1) 課題やゴールを明確にする
(2) 「ゴール」を意識して、自分に適切な質問をする
(3) 他ジャンルから学ぶ
(4) 分析、研究をする
(5) 振り返る